西洋で発展した「洋服」を日本人が積極的に着るようになったのは、約150年前となる明治時代のこと。歴史的には圧倒的に不利な状況ですが、先人たちはここから世界へと果敢に挑み、ファッション史に数多くの名を残してきました。

今回は日本の有名デザイナーとブランドの歴史の流れを、ポイントとなる海外コレクションの初参加時期に焦点を当てながら概観していきます。

70年代デビュー組:日本人デザイナーのイメージを普及

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日本人デザイナーの実力を知らしめ、その後海外における後進の活躍の場を広げたのが、70年代にデビューした面々。

1970年にパリで初コレクションを披露したのは、高田賢三による”KENZO(ケンゾー)”。日本の生地やアジア、アフリカの色彩をミックスした異国情緒溢れるコレクションが人気を集めました。

山本寛斎は”Kansai Yamamoto(カンサイヤマモト)”名義で、1971年に日本人初となるロンドンコレクションのショーを発表。後にデビッド・ボウイの衣装製作も手掛けます。

1973年には三宅一生による”ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)”がパリ・コレクションで初のショーを発表。日本文化を感じさせる”一枚の布”という手法や素材で名声を得ました。

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80年代デビュー組:西洋的な視点を大転換

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1981年の同時期にパリ・コレクションでデビューしたのは、今や日本を代表するモードブランドとなった川久保玲率いる”COMME des GARCONS(コム・デ・ギャルソン)”と山本耀司による”Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)”。

それまでの西洋の服を真っ向から否定するような黒と穴あきの服は、ボロルックなどと揶揄されつつも次第に浸透。アントワープシックス(DRIES VAN NOTEN(ドリス・ヴァン・ノッテン)やAnn Demeulemeester(アン・ドゥムルメステール)など)、Martin Margiela(マルタン・マルジェラ)らに多大なる影響を与えました。

またどちらのブランドも後進の育成に強く、COMME des GARCONSからはbeautiful people(ビューティフル・ピープル)などが、Yohji Yamamotoからはsulvam(サルバム)などがデビューを果たしています。

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2000年代デビュー組:個人的体験を基に趣味性を大爆発

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その後しばらく空白期間があり、2000年代に2つの大きなブランドがパリ・コレクションデビューを果たします。

ひとつは宮下貴裕によるNUMBER (N)INE(ナンバーナイン)、もうひとつは高橋盾が手掛けるUNDERCOVER(アンダーカバー)です。前者はロックやパンクミュージシャンをアイコンとしたナイーブな世界観で、後者はダークファンタジーやパンクを織り交ぜた独特な雰囲気でカルト的な支持を集めました。

なお原宿のNOWHERE(ノーウェア)で高橋盾と共闘したNIGOによる”A BATHING APE(ア ベイシング エイプ)”も、この時期に活躍したブランド。2021年にはKENZOのアーティスティック・ディレクターに電撃就任し、翌年念願のパリ・コレクションを発表しています。

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2010年代デビュー組:新たな領域を開拓

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現在の日本ファッションを牽引するブランドが軒並み海外へと進出し、知名度と実力を確かなものにしていったのがこの時期。

COMME des GARCONSで働いていた阿部千登勢による”sacai(サカイ)”は2011年、同じく阿部潤一が立ち上げた”kolor(カラー)”は2012年にパリ・コレクションへと参加。師匠譲りの脱構築をリアルクローズへと落とし込んだ手法は、いずれも国内外で高い評価を得ています。

またアメリカンヴィンテージをベースに2000年代から活躍する”N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)”がニューヨークへ進出したのもこの時期。さらに偉大なるボクサーの名を冠して強くも繊細なテーラードで人気を集める”JOHN LAWRENCESULLIVAN(ジョン ローレンス サリバン)”も、このタイミングでパリやロンドンに発表の場を移しています。

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2020年代、そしてこれから

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2020年代はコロナ禍により5大コレクションが中止され、多くのデザイナーたちのデビューが奪われることとなりました。それでもオンライン形式やルックブックで、そして再開されたフィジカルなショーで、新たに世へ羽ばたき始めた未来の巨匠を発見できます。

そしてまた「自分もこの一員に加わりたい」と読者の方に思っていただけたなら嬉しい限り。#CBK magazine menは、そんなあなたをいつでも応援し続けています。

※スナップのDAIRIKU(ダイリク)は2017年にニューヨーク・コレクションへ初参加

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By igr600

フリーのファッションライター。雑誌&WEBにて、モードからカジュアルまで幅広く執筆中です。おもにトレンド分析・カラーコーディネートといった情報を発信しています。