ファッションのトレンド予測ってどうやるの?- 深谷玲人のアパレル講座 #03

(この記事は#CBK encyclopediaにて、2020年8月28日に公開されたものです。)

みなさんごきげんよう! DeepValleyの代表の深谷です。

さあ、今回で3回目になりました「ファッションのトレンド予測ってどうやるの?」です!

前回の記事がまだの方はこちら。

  1. ファッショントレンドはどこからやってくるのか?
  2. ファッションのトレンド予測ってどうやるの?

さて、上記2つの記事で色々と書かせていただきましたが、「深谷はどうトレンド予測をするのか?」という具体的な事例をご紹介いたします。

よかったらみなさんと情報交換したいですし、気になるとこあれば教えてください。粒度は荒めかもしれませんのでプロセス重視で見てもらえたら嬉しいです!

ファッショントレンドの予測準備

自社の分析

まずはじめに、準備として自社の数字を頭に叩き込みます。アイテムカテゴリー毎の売上構成比、去年の同時期の売れ筋アイテム(数量も)ここで欠品していたけど本当は在庫あったら売れたもの、なんかも反省的に見ておきますし、逆に「なんで売れたのか?」というのも分析します。

きちんと見て分析できてれば、初年度は大変でも次年度からは「あ、あのブランドのコレクションが落ちたからかー」なんてのもわかるようになります。売れた理由がトレンドだった場合、その立ち位置に当たるのは今年はどれだろう?というのがわかるようになります。

そして、これから計画する時期の昨年同時期の数字と直近の時期の数字を分析します。そのあとはきちんとビジュアルと紐づくようにします。特にはアイテムは細かい部分まで。

コレクションの分析

その後コレクションを見ます。だいたい数時間見ます。メンズもレディースも小物なども見ますし、直近だけでなくその前まで見たりします。直近は2,3回全て通して見ます。

そうすると分析した内容と大体近いテイストのブランドやアイテムがわかるようになります。簡単に言うと売れそうなテイストや、ディレクターがいる場合はその人の好みが見えてきます。深谷は「このアイテム好きでしょ?」とか「売れそうでしょ?」というのを店頭スタッフやディレクターに聞いて目線合わせします。

ここではまだ予測は弱く、仮説程度で、まだ準備の領域だと思っています。ただ感性がブレていないのを確かめるためにやります。ここでいう「感性」とはセンスとかではなく、「経験値や情報を脳にたくさん詰め込んで検索に引っかかるようにしておく準備」みたいなものです。

トレンド予測の調査

店舗からSNSまで現在を分析

ここから実際の調査で、前回書いた1〜5に加え、SNSも確認します。自社の数字分析からここまで1週間以内に到達したいものです。この頃には「このインフルエンサーはこれ着てるでしょ」とか「このブランドはこんなの出してそう」みたいな予測ができるレベルまで市場の流れが叩き込まれていることが理想です。

次に新宿伊勢丹を見に行きます。主に2Fと3Fのセレクトのコーナーです。路面では世界観が強すぎてわかりにくいですし、WEBでは自分にカスタマイズされてサジェストされるのでハイブランドをフラットに見るには新宿伊勢丹が効率が良いと思っています。ここで実際にコレクションで見たアイテムの中で反応良さそうなものなど調査し、仮説の精度を上げていきます。

その次にずばり「ZARA」を見に行きます。なんでZARAかというと、トレンドのキャッチと市場への落とし方がめちゃくちゃに上手いからです。ここで注意が必要なのはZARAの店頭にも戦略があります。おそらくですが、シーズンの立ち上がりは原価率が高かったとしても良い物を出します。これはZARAなりの仮説検証だと思っています。広く浅く仕掛けて「どんなテイストのどんなアイテムが反応いいのか?」を分析し実売期までに勝てる要素をたくさん集め、企画を充実させて売上の最大化をしたいからだと思っています。

トレンドチェックと分析を繰り返す

この準備と調査を繰り返し、精度を向上させて行きます。重要なのはこれを続けることです。計画の時だけではないんですね。なんでかと言うと、「計画よりも修正の方が大変」だからです。

数値で言うと売上予算に対して、できるだけ少ない発注で世界観や戦略のアプローチを行って、当たったものと当たらないものを調査し、追加発注や新規商材の企画に活かすことで精度をより上げていくための修正を行うことが売上の最大化に繋がるからです。

何度も行っているうちに大枠のトレンドが掴めるようになりますし、その中で「自社はどんなトレンドを拾えば良いのか?」ということがわかるようになります。

文字にしてしまえば簡単ですが、見なければいけないポイントは気が遠くなるほど多いです。なんで深谷がやってきたか?と言ったら不安だからです。センスがあるわけでもないし、数字の天才でもないので、情報を掴み続けるしかなかったのです。初めてMDをやったブランドは年商40億のブランドで、たった一言で会社の数百万のお金を動かしてしまうプレッシャーがありました。だから寝る間を惜しんでここまでやっていました。

身体は壊れましたが笑、精神的には楽になったことを覚えています。苦い思い出ですw

最後に、今後「トレンド予測」ってどうなるの?

いかがでしたか? 「大変ですが、やりがいがある」ということが伝わりますかね? これをずっとやっていたので、トレンドは結構詳しい方だと思いますし、「店頭一緒に回ってください」と良く言われたりします。みなさんも機会があればぜひw(あまり大きな声でのフィードバックはできませんがw)

これで終わるのも少し味気ないので、最後に2つ書きます。

アフターコロナ、ウィズコロナのトレンドついて

コレクションのオンライン開催など時系列が変化しつつあり、自粛などでトレンドの波が大きくうねっているように感じます。もしかすると「ブランド単位」でトレンドが発生したり、もっと人やソリューションにつく購買行動が発生してくるように感じます。スポーティなんて在宅と絡めて更に加速するでしょう?

端的に言うと、「コレクションからのトレンドは減少傾向」にあると思います。

「トレンドはすごいマーケティング」だという話

良く考えてみてください、トレンドって、インターネットが断然普及する前からパリやロンドンで一週間だけ開催したショーの内容がローカライズされ、時間をかけて田舎町まで落ちていくのです。すごくないですか?

これからのファッショントレンドは?

上記2つを踏まえて個人的に思っているのは「ファッションはトレンド一辺倒ではなくなるかもしれない」ということ。

それは多様性としても良いことですし、実際トレンドが原因で事業撤退することになったブランドを多く見ていますので、それがなくなるのは良いことだと思います。消費者としても作り手としても、SNSやECでコミュニケーションを取りながら好きなファッションができる時代に変わっていくことでしょう。確かにトレンド自体は衰退していくかもしれません。

ただ、ファッションにおいてトレンドは単なる統計や傾向ではないと思っています。言語化が難しいけど「カリスマ」に近い気がしています。共感の世の中になりつつあり、個の時代とも言われます。正解がコモディティ化する中、新たな「カリスマ」が生まれにくいのもわかっています。

しかし実際にたまにあるんですよ、こんなにトレンド予測たくさんしていても「そうきたか!! 読めなかった!! すごい!!」と思わせてくれるブランドやアイテムが。深谷はそんなのがたくさん出てくる世の中が好きです。

「売上のためのトレンド」は減少するかもしれません、しかし「カリスマ性のトレンド」はこれからたくさん出てくるでしょう。トレンドを予測し売上にする世界ではなく、ブランドが新たにトレンド作り出し共感より深く、本能で繋がるような、そんなファッションで溢れる世の中でのトレンド予測は「人」に対してスター発掘のために行われるのかもしれませんね。

3回にわたるファッショントレンドの連載はこちらで一旦終わりとなります。深谷でした!

 

関連リンクAIでファッショントレンドを分析する『#CBK forecast』画像解析するファッションAI『#CBK scnnr』深谷玲人のTwitter深谷玲人のInstagram

 

出典元:#CBK encyclopedia(2020.8.28.)

The following two tabs change content below.

深谷 玲人

株式会社DeepValley 代表取締役社長。 アパレル業界に10年経験があり、販売からMD、ブランド長まで経験したのち、ITベンチャー企業ベルフェイスに転職し2年半、カスタマーサクセスとしてSaaSのモデルを経験。 双方の経験を合わせ、アパレル業界に特化したIT企業として2018年5月に独立。アパレル生産特化システムの販売とアパレル講師業に務める。