カンボジアで12店舗の古着屋を展開する「ドンドンアップ」代表の岡本さんに聞く、現地のファッション事情

最終更新日: 2024/05/29
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(この記事は#CBK encyclopediaにて、2020年4月4日に公開されたものです。)

毎週水曜日に値下げをする古着屋「ドンドンダウン オン ウェンズデイ」を日本国内に38店舗(2020年4月現在)展開するDon Don up(ドンドンアップ)。

2014年よりカンボジアへの出店を開始し、2020年4月現在で12店舗にまで拡大しています。

カンボジアを選んだ理由、現地のファッション事情、コロナの影響等をうかがいました!(インタビュアー: ニューロープ酒井)

※ コロナの騒動を受けて、チャットにて取材させていただいています。

ドンドンアップ 代表取締役 岡本昭史さん

「29年前のタイ」を彷彿とさせる今のカンボジア

ー 酒井

まずASEANは市場としてどこも魅力的だと思うのですが、その中でもどうしてカンボジアを選ばれたのか、教えていただいても良いでしょうか?

ー 岡本さん

20年以上前にアメリカで起業して古着の輸出商社をやってたんだけど、輸出先が途上国中心だったのもあって、長らく各国を周ってきたんだよ。

その中でカンボジアは古くから「アジア古着の輸出のハブになっていた」というのがまず1つ。

そもそも実はアジアには古着輸出禁止国は多くて、例えばベトナム・フィリピン・インドネシア・中国・インドには展開できないというのもある。

法規の要素は大きくて「カンボジアには外国資本100%で会社を設立運営できる」というのも決め手になった。

現地との合弁は後々揉めたり、乗っ取られたりするリスクが高い。

会計的にドル建てOKなのも大きいね。

ー 酒井

なるほど。現地企業と古着がコンフリクトするような話はよく耳にします。

「古着といったらタイ」のイメージなのですが、カンボジアがハブになっているんですね。立地や物流コストが理由ですか?

ー 岡本さん

タイの古着のほとんどはカンボジアとタイの国境から入れられている。パキスタン経由でカンボジアからのタイという経路が多いね。

ー 岡本さん

あとは一軒目出したときにたまたま当たったのと、人件費が他のASEAN諸国よりもまだまだ安いのと、一番大事なのは平均年齢が若いから採用に困らないことかな。

従業員の問題もあって、僕はどこでも平気だけど、日本から出向で行ってもらう場合、環境が整ってないとメンタルやられる子がどうしても多い。今やカンボジアにはイオンモールも2軒あって、食もネット環境も不自由がないから。

ー 酒井

ただでさえ亜熱帯の気候に対応するのも大変なのに、食べものが合わなかったり医療の心配があったりしたら、そこに張り付いてもらうのってなかなか大変な話ですよね…。

現地のチームって日本人が中心なのでしょうか? 現地メンバーも結構いらっしゃいますか?

ー 岡本さん

暑いのは暑いよ。

食については日本料理屋も100軒以上あるし、他の外国レストランもたくさんあるから全く不自由ない。

メンバーは日本からの出向で常駐2人、あとは入れ替わりで2人くらいが行ったり来たりしてる。

他はすべてカンボジア人で、店長・マネージャー・ワーカーあわせて多分50人くらい。

ー 酒井

50人…! マネジメントが大変そうです。

一緒にお仕事をしていて、国民性のようなもので感じるところはありますか?

ー 岡本さん

うーん、まず、どこのアジア人も基本的にゆるい。

その中でも本当に大事なのは「日本人との相性が良いこと」だと思う。

ASEANは一見みんな似て見えるかもしれないけど、シンガポール・マレーシアは華僑・印僑・マレー(イスラム)だし、インドネシアはがっちりモスリム。ベトナムは共産圏だし、国民性が全然違う。インドは宇宙人。

最も相性が良いのはタイ・カンボジア・ミャンマーの実質オール仏教徒のところ。

そんなに地の利を感じないタイに昔から日本の進出が多かったのは単純に相性が合っただけな気がする。

そして今のカンボジアは29年くらい前のタイと似てる。Wi-Fiの環境とカフェの多さは違うけど。

ー 酒井

以前ベトナムの日本法人の方々にヒアリングさせていただいたことがあるのですが、皆さん「これから行くならベトナムよりミャンマー・カンボジア・バングラデシュだよ」ということをおっしゃっていました。

ー 岡本さん

カンボジア、平均値は正直高くないけど優秀な子もたくさんいるし、英語は日本の学生なんかよりもよほど話せる。

そして親日だから、優秀な子がうちみたいなウンコ会社でも「一応日本企業だから」と入ってくれるのがありがたい。

ー 酒井

いやいや、めちゃくちゃ立派な会社じゃないですか!(笑)

「パチモノ」から本物の萌芽が見られるマーケットにリーチできるのは、Facebook

ー 酒井

従業員さんはやっぱりファッション好きな方が多いんですか?

ー 岡本さん

もともとはすげーダサかったりするけど、ウチに勤め出して一年も立つとめちゃくちゃオシャレになるよ。

どこの国も一緒だけどみんなスマホしかいじらないからやっぱり感度いい子はすごい。シュプのパチを着こなしてる????

ー 酒井

パチ。(笑)

現地ではどんなブランド、デザインが好まれるのでしょうか。

インスタとかでファッションもグローバル化しているような感覚はあって、日本とそんなに違わなかったりするんですかね。

ー 岡本さん

日本のドメブランドは壊滅的に知らないね。

やっぱりナショナルブランドかファスト系かな。直営はなくて、パチばかり。

だから古着だけど本物を売ってるうちで買ってくれる。

ー 酒井

まだ直営はないんですね。

昨年行ったタイはZARAとかH&Mとかユニクロだらけでした。

進んできたとは言え、まだちょっとタイムラグがあるんですね。

ー 岡本さん

そうそう。

でもお金持ちの比率は高くて、彼らはタイかマレーシアで買ってくるみたい。

ユニクロも知名度まだまだだけど、やっぱり品質が高いのは目に見えてわかるから売れてるよ。ユニパチもある????

ー 酒井

ユニクロのパチモノまで…!

現地のドメスティックブランドとかメルカリ的なサービスとか、広い目で見たときのプレイヤーとしては他にはどういうところがあるんですか? パチ以外で。(笑)

ー 岡本さん

スポーツ系はどんなブランドでもめちゃ強いね。イオンモールや他の現地モールにはナショナルブランドは色々あるよ。ナイキ、アディダス、プーマもここ数年でようやく直営できたし。

ドメブラはない。

人気あるのはタイのチェーン店やマレーシアのチェーン店。

CtoCに特化しているサービスでスケールしているとこはあまりない。ほとんどFacebookのDtoCでやってるね。

ー 酒井

タイのpomeloとかそういうところですか?

ネット通販はまだそこまでないんですかね。

ー 岡本さん

ようやくペイメントやデリバリーが整ってきたからこれから出てくるかも。

まだまだ小口配送のシステムが脆弱だからね。

中国資本すごいからペイメントはだいぶ進んできたよ。

ー 酒井

Facebookはマーケティングチャネルとして使われているということですか?

広告打って、結局はリアル店舗に誘導するんですか?

ー 岡本さん

そうそう、ほとんどがFacebook。

Facebook上で売買してるのも多いよ。

WEB広告は日本と比較して圧倒的に反応率が高い。

OtoOも積極的にやってる。うちもそれが全てだね。

ー 酒井

こういう話を聞くとSNSってプラットフォームであって、使われ方で別物になるんだなというのが改めて理解できます…。

ー 岡本さん

ASEAN諸国の多くは「インターネットってFacebookでしょ」って信じてるぐらいだからね。

コロナの逆境を乗り越え、カンボジア内で60店舗を目指す

ー 岡本さん

今はカンボジアもコロナでマジで死にそうだよ。

前年比半分以下????

日本からの渡航もできないし、帰国しても2週間待機になる。

ー 酒井

コロナは東南アジアも大変なようですね。一時期「夏に収束する」みたいなことが言われていたので高温多湿だと大丈夫なのかなと思って調べたら結局東南アジアも大変なことになっていて、あれって思いました。

雰囲気も鬱々とした感じですか?

ー 岡本さん

そうだね。最初は暑いから大丈夫って噂だったんだけど結構出ちゃってるし、街は外出規制で閑散としてるよ。

3月前半に予約してたのは直前キャンセル、4月に行こうと思ってたけど現状難しそう。

マジでピーンチ????????????

ー 酒井

うちも採用してビザまで発行したポーランド人のエンジニアが渡航して来れなくなって、結局リモートで働いてもらっています。

行き来できないのはコミュニケーション上かなり痛手ですよね…。

ー 岡本さん

だね〜。しんどい。

ー 酒井

コロナの件はいかんともしがたいですが、マーケットとしては色々と面白いです。

現地に信頼できるパートナーみたいな方がいるのかと想像していたのですが、もともと岡本さんの庭なんですね。

それでも苦労したこととか、「マジかよ」みたいなエピソードとかってあったりしましたか?

ー 岡本さん

20年以上前から行ってたけど基本輸出オンリーだったから、やっぱり店舗出して現地に根付いてやるってのは色々大変だったね。ようやく6年、だいぶ「カンツボコツ」がわかってきたけど。

自分は2か月に1回くらいしか行かないけど、やっぱり長くいるうちの日本からの出向社員がめちゃくちゃ頼りになるね。

最初お店開いたころなんて、カンボジアスタッフは靴はかないで仕事してたからね。「ファッションなんだからちゃんとオシャレしてー」って大変だったよ。

ただの売り子としてじゃなくて「なぜドンドンダウンなのか?」を考えてもらったりとか、うちのビジョンとミッションを教育していくのは大変だったよ。

あとはお金の問題。まだまだ賄賂社会だし、そこらへんは大変。

それから昔は土地勘というか「不動産感」がなかったので、良い立地だと思って借りたところがスコールになるたびに床上冠水したりで閉店を余儀なくされたりした。

後は、諸外国の中では安全とはいえ、やっぱりひったくりとか結構あるしね。

自分はインドとかネパールとかアフリカとかで散々仕事してきたから気にならないけど。

ー 酒井

店員さんがおしゃれだと説得力が全然違ってきますよね。そういう世界観、すごく好きです。学生のころ、古着屋の兄ちゃんに色々と教えてもらいながら買いものするの楽しかったです。

不動産は確かにキャッチアップ大変そうです。小売業の核なので、そこ押さえると逆に強みになってきますね。

あとは日本人スタッフの心のケアか。(笑)

ー 岡本さん

今のうちのスタッフはカンボジア好きすぎる変態ばかりだから全然大丈夫なんだけどね。

ー 酒井

それは頼もしい!

いまカンボジア国内に10店舗くらいですよね。

既にめちゃくちゃすごいなと思うのですが、今後の展望やカンボジアへの思いの丈を伺えますでしょうか。

ー 岡本さん

出したり閉めたりでようやく12店舗。

コロナは置いといて、カンボジアそのものにはすごいポテンシャルがある。

他のアジアはタイミング的に「もう遅い」っていうところが多いし、市場規模大きいとこで成功すると日本の大手と後で競合することになる。

うちはとりあえず昔の失敗を教訓に完全にドミナント戦略で圧倒的なブランド認知を固めるために後50店舗くらいは出したいと思っているよ。

関連リンクDon Don Down on Wednesday(日本)カンボジアフランチャイズ案内岡本さんのnote「倒産1000本ノック」

出典元:#CBK encyclopedia(2020.4.4.)

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