世界進出に出遅れた「日本のコスメ」を必要としている米国人に届ける『COSME HUNT』の3年目

最終更新日: 2020/04/22 by kaori

日本の広告業界でキャリアを積んだ後、2014年に北米に渡ったクロエさん。

「コスメやスキンケアにもっと選択肢はないものか」と探し求めていた米国の友人たちに日本製の化粧品を好みに合わせておすすめしたところ、いずれもどはまり。彼女たちの「日本コスメ熱」に火をつけることになりました。

一方で、見渡してみても米国に積極的に進出している日本の化粧品は高級品ばかりで、ドラッグストアに並んでいるような「プチプラ商品」については商品自体も情報も手に入らないことに気づいたと言います。

これを機に2018年、サンフランシスコに “COSME HUNT” を設立。日本化粧品に特化した通販サイトを展開しています。

米国にいるからこそ見えてくる日本コスメの良さ、組織運営する楽しさ・大変さ、コロナの影響などについてインタビューさせていただきました。(インタビュアー: #CBK編集部 酒井)

※ コロナの騒動を受けて、チャットにて取材させていただいています。

COSME HUNT代表・高橋クロエさん

日本コスメの特徴は品質、配慮、文化の3つ

ー 酒井

COSME HUNTさんは米国で日本コスメのECを展開なさって、支持を集めていらっしゃいます。

欧米や韓国コスメと比較したときの、日本のコスメの良さはどのようなところにあるのでしょうか?

ー クロエさん

欧米の方に聞かれたとき、私は「日本コスメとそれ以外では3つの大きな違いがある」と答えています。

  1. 品質の高さ
  2. ユーザーへの配慮
  3. 化粧品に対する文化

まずは「品質の高さ」について。

日本人の性質もあり、長年の開発・審査を経た商品が世に出るので、品質は他国のものよりも圧倒的に高い傾向にあります。

値段についてもコスパが良い。つまり「安くて良いものが手に入る」というメリットがあります。

ただ、日本を安売りするイメージ作りたくないので、私はあまり押し出さないようにしています。

ー 酒井

「コスパを訴求しない」っていうのはちゃんと思想がないとできないことですよね。

短期的な利を得ることを考えたらほとんどの事業者はコスパを全面に押し出してしまうと思います。

ー クロエさん

次に「ユーザーへの配慮」です。

商品に機能がいくつもついていたりと、ちょっとした気づかいが施されているのが日本のブランドです。

「容器の形がもうちょっとこうなってたら良いな」とかありませんか?

日本の開発者の方はそういった細かいところまで目が行き届いていて、それが欧米の人の「Wow!」という感動を生みます。

ー 酒井

コスメではないですが、最近で言うと花王さんのプッシュ式のアタックは画期的でしたよね。トリガーを引くだけという楽チンを実現していました。

「これが米国で感動されてる」っていう具体的な例を教えていただいても良いですか?

ー クロエさん

ベビーフット」という、足裏やかかとの角質を取る商品が大絶賛されています!笑

旧来のヤスリで削るタイプではなく、ジェルの入った袋を靴下のように履くだけ。これで足がピカピカになります。

ー 酒井

へー、すごい。

体験として「きれいになるためにガシガシかかと削ってる私」を避けられるのも良いですね。笑

ー クロエさん

時間も節約できるし、効果も最大化できます!

日本製品は一石二鳥なものが本当に多いんです!笑

「ベビーフット」は口コミがあまりに広まったため、アメリカの薬局で扱われるようになりましたw

ー 酒井

色んなメディアが発達している今こそ、こういう「ながら」は威力を発揮しますよね…!

ー クロエさん

最後が「美に対する文化」です。

美容品に対するそもそもの考え方の違いがあって、欧米では何か肌にトラブルがあったとき、それを強力な薬で治すアプローチを取ります。

日本ではニキビができるのを事前に防ぐような、体の根本から解決していこうという姿勢で、美と向き合ってきました。

ー 酒井

東洋医学の未病的な考え方がコスメにもあるんですね…!

西洋医学は特定の症状に対して特定の治療を行って1対1で解決するのに対して、鍼灸などは「まだなっていない病気」を事前にケアするためにトータルで状態を良くしていこうという思想を持っていて、コントラストが見られます。

ちなみに中国コスメにも同じような傾向が見られるものですか?

ー クロエさん

はい、まさに中国コスメだけでなく、韓国含めてアジアの美容文化は近い思想を持っていると言われています!

ー 酒井

医学の思想がコスメにもリンクしているのは面白いですね…!

「日本のブランドさんに成功してもらえないと私も悲しい」から、米国進出も全力でサポートする

ー 酒井

韓国のコスメが世界を席巻した中で、こんなにもホスピタリティあふれる日本のコスメが出遅れた理由はどういったところにあるのでしょうか?

ー クロエさん

アメリカ進出の差は、完全に企業の戦略の違いから生まれています!

韓国は7年ほど前から積極的にアメリカに進出しています。人口が日本の半分以下なので、マーケットサイズを考えると海外戦略は必須だったという背景もあります。

日本もこれから人口が減少していくので、同じく海外戦略に力を入れるフェーズにあると思います。

ー 酒井

韓国は前々から仕込んでいたということですね。

日本の「半端な内需」はどの業界でも足を引っ張っている側面がありますね…。

ー クロエさん

韓国では政府が海外進出する企業を積極的にサポートしているので、要因として複合性です。

中国や北朝鮮とも隣接しているので、政治や競争に対する強い意識もあると思います。国民全体の危機感が違うのかもしれません。

ー 酒井

地政学的にも韓国は常にプレッシャーに晒されてきたし、通貨危機のトラウマもまだみなさん鮮明でしょうし、おっしゃるように危機感は全然違うでしょうね…。

日本も市場がシュリンクしていく中でインバウンドに支えられている側面があり、意識は既にシフトしてきていると思います。

クロエさんのところにも日本メーカーからの相談が絶えないかと思うのですが、コンサルのようなこともなさっているのでしょうか?

ー クロエさん

はい!!

まだあまり大々的な営業はできていないのですが、それでも毎月多くのブランドさんからご依頼をいただいています。

それぞれのブランドさんに思いがあって、一方でアメリカのマーケットの実情がある中で、この2つの点を一本につなげていくようなサポートをさせていただいています!:)

アメリカ展開は、ぜひCOSME HUNTに相談ください!笑

ー 酒井

進出に当たってのグランドデザインを手伝い、進出後も適宜相談役になるような感じですかね。

右も左も分からない中で、案内役がいるのは本当に助かると思います。あらゆる意思決定のスピードと精度が変わってきそうだなと。

コンサル案件はある意味時間的リソースを取られるところもあると思うのですが、クロエさん的にはポジティブなんですね。

ー クロエさん

これは本当におっしゃる通りで、今は私がフロントとなってブランド様の成功までお手伝いしていますが、実績や一定の提案の型ができつつあって、それをチームにも共有しています。これからは私1人ではなくチーム全体でリードをしていく体制を整えていきます!

日本のブランドさんに成功してもらえないと私も悲しいので、ブランドさんとは二人三脚で「一緒にアメリカの市場を取りにいきましょう!」とここまでやってきました!

ー 酒井

ポリシーが一貫していて素敵だと思います。

例えば打ち出すコンセプトとか、変わらずクロエさんが頭をフル回転させないといけないところと、ある程度フレームワーク化してチームで運用できるところは分けていけますよね。

そうやってブランドさんから頼られているのは、何と言っても『COSME HUNT』を通して消費者の生の行動や声を日々拾っているからだと思います。

ー クロエさん

アメリカの消費者とは日々、ソーシャルメディアを通じてコミュニケーションをしています。

アメリカで生まれ育ったチーム自ら現地の課題をヒアリングしているので、日本のブランドさんからはその点を評価いただいています。:)

COSME HUNT

1万人のFacebookコミュニティで寄せられる、現地の生の声

ー 酒井

『COSME HUNT』では実際にどういったユーザーが、どのような商品を購入しているのでしょうか。大ヒットしている事例、意外な使われ方など、具体的なエピソードもあれば教えてください!

ー クロエさん

今は化粧水・乳液がもっとも売れています。続くのが化粧落とし。主に基礎化粧品ですね。
例えば『肌ラボ』さんの『極潤』という化粧水ですが、価格に対して非常に保湿効果を持っていて、COSME HUNTでもアメリカのSNSでも話題で引っ張りだこです。

ー 酒井

肌ラボは僕も一時期使っていました。笑

めちゃくちゃ肌弱いのですがあれはフィットしました。

ー クロエさん

長時間しっかり潤うのに、べったりする嫌らしさがないんですよね。

欧米の商品は大抵、保湿効果の高いものはべったりしちゃいます。

ボディにも使えてUSでは$15くらいで買えるので、とても人気です。

日本には他にも良いブランドがたくさんあって、それらに対する「欲しい」という要望が寄せられているので、取り揃えられるように日々ブランド側へ呼びかけをさせていただいています。

ー 酒井

ソーシャルメディアはどの媒体で、どのようにコミュニケーションなさっているんですか?
統計的な市場調査とかよりリアリティのある生っぽい声が集まりそうです。

ー クロエさん

主にFacebookとInstagramです。

実はFacebook内にはCOSME HUNT限定の招待制コミュニティがあります。ここで拾える声には確かにリアリティがありますね。:)

私たちが押し出したい商品や日本で話題になっている商品を定期的にコミュニティで紹介して反応を見たり、ユーザーさんが自由にQ&Aできる雰囲気づくりをしています。

COSME HUNTのオフィシャルInstagram
ー 酒井

コミュニティって何人くらいいるんですか?

完全に偏見ですが、米国だと皆さんやーやー発言してくれそうです。笑

ー クロエさん

米国の人は自分の言葉で話したり主張するのが本当に得意ですし、大好きですよね!

コミュニティは1万人ですが、アクティブに会話に参加する人というとまだ限られています。

これまでプロダクト側・ブランド側にリソースを割いていたので、ここの数字は私ももっと集計・追跡できるように整えているところです!

ー 酒井

1万人ってすごいですね…!

そのコミュニティではどういう言葉が飛び交っているんでしょうか?

ー クロエさん

「私はすっごく乾燥肌で日本の商品を試したいのだけど、これはどこで買えるの?」

「この日本の商品の使い方を誰か教えて!」

というような会話が一番多いです。笑

日本化粧品に関する英語の情報が少ないので、商品の訴求ポイント・使用方法がまったく伝わっていないんですよね。

COSME HUNTはこれを解決しようと、英語記事を発信したり、商品訴求をプロモーションしたりしています。

ー 酒井

そうやって関心の高い化粧品がユーザーからプッシュされてきて、要望の多い順に記事化して、同じ質問が出たら記事案内して…っていうオペレーションができたらどんどんスケールしていきますね。

ブランド側のCSを代行しているようです。笑

ー クロエさん

言われてみると確かにそうです!笑

結局はアメリカ側のニーズに基づいて商品を紹介していかないと、ただの日本の押し売りになってしまいますからね。><

ー 酒井

そこのマッチングができる立ち位置はすごく良いですね。

採用基準は「自分と異なるバックグラウンドや価値観を受け入れられること」

ー 酒井

「アメリカで生まれ育ったチーム」というお言葉がありましたが、COSME HUNTさんはどういった組織体制を取っているのでしょうか。

ECサイトを拝見していて、アプリケーションとしての品質高いなぁと思いました。

米国でチームビルディングする楽しさ、難しさ含めて教えてください。

ー クロエさん

テック企業のCEOの酒井さんにそう言ってもらえるのは本当に嬉しいです。><

ローディング時間はもうちょっと減らしたいところですが…。

ー 酒井

コンソールエラーも出ていないし、要素の命名規則もしっかりしてるし…。読み込みもスムーズだと僕は思いましたよ。笑

ー クロエさん

ありがとうございます。笑

チームビルティングはこだわっている分、マネジメントはかなりきついです。

  • アジア文化を理解できるアメリカ人を始めとした諸外国人
  • アメリカ文化を十分に経験している日本人

この2つで構成しています。

日本ブランドさんとのやりとりではどうしても日本語に集中してしまうことがあり、日本語が理解できないチームに疎外感を与えないよう工夫するのに必死です。

さらに今はコロナの影響でリモート体制を取っていて、情報共有が非常に大変ですw

ー 酒井

うちも外国人エンジニアが3人いて、日本語だけでも英語だけでも情報共有が途切れてしまうという問題を抱えています。いちいち翻訳するのはちょっとやってられないんですよね…。

カルチャー的なコンフリクトとか、ギャップを感じるような振る舞いとかはないですか?

ー クロエさん

「30歳だけど学校に通いながら仕事をしたい」とか「アレルギーでこれが食べられないから会社ランチで出すものは気をつけてほしい」とかですかね。

基本的に自分と異なるバックグラウンドや価値観を受け入れられるチームにしています。

チーム各自の置かれている生活状況の違い、考え方の違いが何万通りと出てくるので、その中でも柔軟にコミュニケーションしてプロジェクトを実行できるメンバーを採用しています。

チーム『COSME HUNT』
ー 酒井

良いチームなんですね。

実際お国柄がどうとかいうのもあるのはあるんですが、それより教養があるかとか、想像力があるかとか、一緒にやっていく上では個々のパーソナリティの部分の方が大きいなと感じます。

ー クロエさん

あとは、年齢や性別などは絶対に聞きませんし、見た目で何人と決めつけたり、相手をラベル付けするということは絶対にしません。

本当に人の数だけ生き方があるので、それらを受け入れる、驚かないという感じでしょうか。

アメリカ現地の人がより広い美への選択肢を持つお手伝いを変わらず続ける

ー 酒井

現在コロナの影響でリモート体制を取られているとのことですが、コスメの消費にも少なからず影響が出ているだろうなと思っています。

傾向としてはどのようになっているのでしょうか?

ー クロエさん

やはり店舗よりもオンラインの売上が伸びているそうです。

カテゴリで考えるとメイクアップ領域(人に会うための化粧品)には影響あると思います。

反面、家で過ごす時間が増えて、結果的に自分を見つめなおす機会が増えて、基本的なセルフケア領域は伸びていくのではないでしょうか。

私自信、仕事も含めて「今は日ごろ見落としていたものを見なおす機会、自分を磨く機会」と捉えて、セルフケアの消費は減っていません!

もうちょっとここはちゃんとリサーチしたいですね。><

ー 酒井

確かにセルフケアには絶好のチャンスですよね。

肌に負担をかけるメイクアップもしなくて良いという…!

セルフケア領域は日本にアドバンテージがあるというお話だったので、COSME HUNTさんは変わらずお忙しいと。笑

最後にこれから取り組んでいきたいこと、サービスへの思いなど、思いの丈を語ってください!

ー クロエさん

ようやくチームビルディング・受け入れ態勢が整ってきたところで、これから日本ブランドさんへの呼びかけを強めていきます!

テクノロジーの力を使えば、国境もコロナも超えてマーケットを広げることが可能です。:)

我々が取り組むことは変わらず「アメリカ現地の人がより広い美への選択肢を持つお手伝いをすること」です。

世界に向けて展開したい日本企業さま、ぜひ一緒にチャレンジしていきましょう!

ー 酒井

色々と勉強になりました。

お忙しいところありがとうございました!

ー クロエさん

とんでもないです!!

こちらこそありがとうございました!

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